魔の山〈上〉 トーマス・マン “物語というものは過ぎ去ったことでなくてはならないからである。”

魔の山〈上〉 (岩波文庫)
まえがきが面白くて行きつ戻りつ何度も読んで、今日やっと第1章に入った。

時という不思議な現象(エレメント)の問題性と特殊な二重性にひとまずかるく読者の注意を呼びさましておくことにしたい。

転回点になるような、強いインパクトをもつ出来事の前に起きたことは、実際に経過した時間よりも過去になる、それも転回点の直前であるほど“過去の度合い”は深くなる・・・という話(だと思う)。
自立する文庫本(上巻598ページ、下巻690ページ)のまえがきは、2ページと3行しかなくても、それにふさわしい広がりを持っていた。「長さ」のあるものは何にでも二重性があるということ?